(お送りいただいた本から)
広島大学教授の西原大輔さんから送られてきた。前回の倉本修「美しい動物園」と同じ出版社「七月堂」の新刊で、ちょっとびっくり。
西原さんは、10数年前、国際日本文化研究センターの共同研究会の懇談会で出会って以来、新刊がでれば、お送りいただいている。ありがとうございます。
(以下、出版社の紹介文から)
詩物語
西原大輔
詩を書いた。その心境も
詩の後に詩人のエッセイが書いてある。詩を書いたその心の内を明かすとは、なんとも大胆。しかしこれは著者曰く古来よりの由緒あるスタイルである。
自由に詩を作ったと言いながらも、独自のスタイルは崩さない著者の‘粋’な詩集だ。
『詩物語(しものがたり)』という書名は、平安時代の歌物語(うたものがたり)から発想しました。『伊勢物語』『大和物語』『平中物語』では、和歌と短い文章が一体となっています。実在した人物について語られることも多く、一種の伝記のような性格を持ちます。
短歌に詞(ことば)が加わり、韻文と散文が融合した抒情的作品。『詩物語』は、そのような詩文交響の世界を意識しつつ作ったものです。歌物語では、定型三十一文字が鍵ですが、本書では、主として自由律詩が中心となっています。
通常、詩集に掲載されるのは、詩作品だけです。私はそのような本を手にしつつ、詩人自身による解説が添えられていたら、と思うことがしばしばあります。詩とエッセイを並べた『詩物語』では、詩が文を引き立たせ、文が詩を補うものとなるよう心がけました。(「はじめに」より)
うれしい黄昏
なんてやさしい黄昏だ/ひとり窓辺にくつろげば/網戸から良い風が来る/蜩があわれを歌う/家々に明かりが点る/夜空には星が瞬く……/風が心を撫でてゆく/うれしい孤独の黄昏だ
日常のふとした瞬間に、目の前の景色がどこか遠い異郷の光景に見えてくることがある。いつもの場所にいるはずなのに、自分がまるで見知らぬ土地に迷い込んだかのような錯覚。ある夏の晩、僕は広島大学の研究室から外を眺めながら、気の遠くなるような、不思議な感覚を味わっていた。
詩 左頁:エッセイ
詩集
2015/11/30発行
四六判 上製・箱付
3,240円(税込)