2018年5月1日火曜日

(いただいた本から)「『君たちはどう生きるか』に異議あり!」

(いただいた本から)
「『君たちはどう生きるか』に異議あり!」(村瀬学著)



副題に、「人間分子論」について議論しましょう、とある。200万部を超えるベストセラーになっている「吉野源三郎『君たちはどう生きるか』」には、「上から見る目」があり、生き方のお手本にはならない、とあえて異議を唱えている。進歩に寄与しない人間を低くみる見方に誘導する人間観になるというのだ。それと違って「大地に生きる」生き方を示し、また「いじめ」に対する問題のとらえかたも提案している。

 ああ、本はこのように読みながら、考えることができるのだ、と刺激を与えてくれる。

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著者 村瀬 学

発売日 2018年 04月

本体価格 1300円

ISBN 978-4-86565-120-1

判型 四六判・並製


リード文 問題提起の書。本書によって、ベストセラーをもっと有効に活用しましょう。感動の古典的名作といわれ、漫画とあわせて大ベストセラーになっている吉野源三郎『君たちはどう生きるか』ですが、この本が生き方の模範のようにされていることに異論があります。


解説・目次 問題提起の書


本書によって、ベストセラーをもっと有効に活用しましょう。

感動の古典的名作といわれ、漫画とあわせて大ベストセラーになっている吉野源三郎『君たちはどう生きるか』ですが、この本が生き方の模範のようにされていることに異論があります。以下の重要な問題が見逃されていると考えるからです。


★人間観…作品の冒頭、コペル君が発見し、おじさんが科学的なものの見方として称揚する「人間分子観」は、この本の根本的なものの見方になっています。しかし、このものの見方の偏重は、進歩に寄与しない人間を排除し、人間ひとりひとりを尊重しない人間観となります。これを作品にそって具体的にみていきます。もちろん対論を提示します。


★すり替え…「貧困」や「格差」は「労働者」の問題に、「共同の意志」と「個人」の問題が「個人」と「個人」の友情の問題にすり替えられています。こうしたすり替えは作品のいたるところに存在します。


★英雄礼賛…文庫版解説の丸山真男氏もさじを投げ、漫画版では削除された「ナポレオン礼賛」の章。上記の人間観が英雄礼賛に結びつくのは必定です。コペル君・おじさんの発想の危うさが際立っています。


★解決法…事件の解決は、「力」にうったえる方法によっています。本当の解決とはいえません。本書の「いじめ」に対する考え方を明確に示します。


著者プロフィール 1949年京都府生まれ。現在、同志社女子大学特任教授。

著書『初期心的現象の世界』『「いのち」論のはじまり』『「あなた」の哲学』『自閉症』『次の時代のための吉本隆明』『徹底検証 古事記』『古事記の根源へ』ほか、多数

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